「シボ」「トラ」「血筋」は天然の証!知っておきたい革の個体差と魅力【保存版】
念願の革財布やレザーバッグを購入して、手に取った瞬間。ふと、表面に「スジ」のようなものや、シワのようなものを見つけて「これって傷じゃないの?」「不良品かな?」と不安になった経験は有りませんか?
実はそれ、不良品ではありません。むしろそれこそが天然皮革の証であり、革好きならわかる「革の個性」なのです。
私たち人間一人ひとりの顔や指紋が違うように、動物たちの肌にもそれぞれ個性があります。これらは個体差と呼ばれます。均一に作られる合皮にはない、世界に一つだけの表情。
本記事では、大阪大国町で長年革製品に携わる株式会社フジリュウが、知れば知るほど愛着が湧く革の個体差の解説をしていきたいと思います。
なぜ革に個体差があるのか?
そもそも本革とは何か。それは文字通り、牛や馬、豚などの動物の皮をなめして素材にしたものです。
動物たちは、野山を駆け回ったり、喧嘩をしたり、ケガをして治したりなど様々な経験をしています。
また、人間と同じように血管があり、関節を曲げ伸ばしするためのシワも生まれています。
これらが生きた証として皮に残ったものが、「シボ」「トラ」「血筋」などの特徴です。
一方で、ポリウレタンで作られた合成皮革(合皮)は、工場で均一に作られているため、こうした個体差は存在しません。(あえて型押しで模倣するパターンはあります。)つまり、個体差があるということは、その革がまぎれもなく本物であるという証明なのです。
知っておきたい代表的な「革の表情」
それでは、革の個体差にどういった特徴があるのか、代表的な用語を解説していきます。
これを知ることで、革製品選びが今の何倍も楽しくなります。

シボ
「シボ」とは、革の表面にある細やかな凹凸(シワの模様)のことを指します。
人間の皮膚にもキメがあるように、牛の皮にも場所によって密度の違いがあり、それがなめしの工程で収縮することでシボとして現れます。
そのシボは均一でなく、お腹周りや首元など、部位によって大きさや形が異なります。
シボがあることで革に立体感が生まれ、ふっくらとした優しい手触りになります。また、使用することで生まれる小さな傷を目立たなくしてくれるというメリットを持っています。
シボとは別に「型押し(エンボス)」といって、人工的にシボ模様をプレスした革もあります。これは均一で美しい仕上がりになりますが、天然のシボのような不規則な面白さはなくなります。

トラ
トラとは、その名の通りトラの縞模様のように見える太くて長いシワのことです。
主に首から肩にかけての、よく動かす部位に見られます。
直線状や帯状に、スジが平行に入っていることがよくあります。
シワが入っているということで、敬遠されることもありますが、一部の革好きの中では人気のある特徴の一つで、わざわざトラが入っている製品を探す人もいるほどです。

血筋
血筋とは、皮膚の下を走っていた血管の跡が葉脈のように表面に現れたものです。
皮膚が薄い部分や、血管が太い部分によく表れます。一見するとひび割れや傷のように見えることがありますが、触っても引っ掛かりはなく、革の内部の模様であることが分かります。
ヌメ革などのナチュラルな仕上げの革だとよりはっきりと見ることが出来ます。これが血液が流れていた証。自然的な幾何学模様として一点モノの価値を高めます。
血筋による強度に影響はありません。

バラ傷
放牧中に木の枝や岩肌でこすったり、他の動物と喧嘩をしたり、虫に刺されたりした傷が、治癒して痕になったものです。
治癒した傷跡なので革として加工された段階では強度に問題はありません。
一部では、こうした傷跡も自然の風合いとして好意的に受け入れられることもあります。
大きなバラ傷をあえてデザインのアクセントとして考える方もいます。
なぜ「個体差」が目立つ革と、目立たない革があるの?
「手持ちの革のバッグには、そんな模様はないけど?」と思われた方もいるかもしれません。
実は、革の仕上げ方法によって個体差の現れ方は大きく異なります。
素材を活かす染料仕上げ
革の繊維に染料を染み込ませて色をつける手法です。革本来の風合いがそのまま残るため、シボ、トラ、血筋、バラ傷などハッキリと見えます。
エイジングしやすく、革本来の魅力を味わいたい皮革に多い仕上げ方法です。
欠点を隠す顔料仕上げ
革の表面にペンキのような塗料(顔料)を吹き付けて色をつける手法です。表面がコーティングされるため、傷やシワ、血筋などは隠れて見えなくなります。均一できれいな色になりますが、革らしい奥行きや経年変化は感じにくくなります。
フジリュウにご相談いただくOEM案件でも、「革らしい風合いを重視したい」なのか、「均一な綺麗さを重視したい」なのかによって、提案する革の種類や仕上げを使い分けています。
まとめ
シボ、トラ、血筋。これらは汚れや傷ではありません。その動物が生きていた証であり、合成皮革などにはない温かみです。
あなたが持っている革製品にトラや血筋などが入っていたら「個性的なアタリだ」と思ってみてください。使い込むほどに色が深まり、ツヤが増してくると、より一層味わい深いものへとエイジングされます。
自分だけの模様を育ててみてはいかがでしょうか?