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素材解説

栃木レザーとは?|日本が誇るタンニン鞣しレザーについて解説

2025/06/12

革や革製品を愛好する人々の間で、定番の一つである「栃木レザー」。財布をはじめとした革小物、ベルトに鞄など、日本国内はもちろん、世界中の職人やブランドから高い評価がされている高品質なレザー素材です。しかし、革と一言で言っても製法や種類、特徴はさまざま。そんな数ある革の中で、なぜ栃木レザーはこれほどまでに高い評価を得ているのでしょう?

この記事では、栃木レザーの特徴や伝統的な製造方法、歴史、魅力的なポイントなどを掘り下げてご紹介します。

栃木レザーとは?

「栃木レザー」とは、1937年に創業した栃木レザー株式会社が製造する植物タンニンなめし革のことを指します。本社・工場は栃木県栃木市にあり、日本国内で数少ない「植物タンニンなめし専門のタンナー」として、革製品愛好家や革製品の製造現場などから長年にわたって信頼を得てきました。

化学薬品を使うクロムなめしとは異なり、自然由来の植物タンニンを用いて、時間と手間をかけて丁寧に鞣された革は、経年変化によって味わい深い風合いへと育っていくのが特徴です。

栃木レザーの伝統製法

栃木レザーが長年にわたって圧倒的な信頼を得ている最大の理由は、現在では極めて珍しくなった「ピット鞣し」を採用している点にあります。

巨大なプール(ピット槽)に植物タンニンを溶かした液を張り、その中に牛革を長い期間をかけてじっくりと漬け込むという手法です。短期間で大量生産できるクロムなめしと比較すると、時間もコストもかかる非効率とも思われる方法ですが、この非効率こそが、栃木レザーの魅力を生むのです。

ピット鞣しは、じっくりと時間をかけて革の内部までタンニンを浸透させ、繊維の芯まで均一になめされるため、しっかりと繊維の詰まった革に仕上がります。加えて、革本来の質感を保ちながら、表情豊かな仕上がりになるのです。

栃木レザーの特徴と魅力

栃木レザーには多くの特徴や魅力があります。
そんな魅力をカンタンにご紹介。

  1. エイジング(経年変化)が美しい
    植物タンニンなめしによって造られる自然由来の革は、使い込むごとに色が深まり、艶や深みが増していきます。新品時の淡い色合いから、年月をかけて深いブラウンや飴色へと変化していく姿は、革好きにとってたまらない楽しみです。
  2. 丈夫で長持ち
    ピット鞣しによって繊維までしっかりタンニンが浸透しているため、摩擦や引っ張りに強く、長年使っても型崩れしにくいのが特徴です。定期的なメンテナンスを行うことで、長い期間愛用できます。
  3. 天然の風合いを活かした仕上げ
    栃木レザーは表面加工が最小限に抑えられているものもあり、革本来のシワやトラ、血筋といった個性をそのまま活かした仕上がりになっています。まさに「一点もの」の革として育てることができます。
  4. 多彩なバリエーション
    栃木レザーにはヌメ革をはじめ、オイルレザー、プルアップレザー、エンボス加工されたものなど、多様な仕上げがあります。用途や好みに合わせて最適な革が選べるのも魅力です。

栃木レザーは環境にやさしい?

昨今、モノづくりにおいて環境保護は大きな課題の一つになっていますが、栃木レザーは創業当初から「自然と共にある」革づくりを実践してきました。

植物タンニンは再生可能な自然由来の素材であり、廃液処理や排水にも徹底した環境保護体制を敷いています。また、使用する原皮も食肉の副産物であり、命を無駄にしない循環の一部としての考え方がベースとなっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

栃木レザーは非常に多い工程を経て作られる伝統的な高品質素材なんです。

日本の伝統的な職人技と素材へのこだわりが詰まったレザーは、「持つ喜び」を与えてくれる逸品。革製品選びに迷ったら、まず栃木レザーを手に取ってみてはいかがでしょうか。

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